ー山口刃物製作所ー
山口刃物製作所は東京都墨田区本所で創業し、百年以上の歴史を持つ老舗工房です。
私が友人を通じて五代目に初めてお会いしたのが、もう二十年近く前のことになります。
いかにも下町の職人という寡黙な方で、愛想こそありませんがこちらの質問には的確に無駄なくお答え頂き、技術や職人としての心構えについてもお聞かせ頂けたのです。
私はすぐに五代目の人柄や職人としての生き様に惚れ込み、その後何度も通うことになりました。
そして通えば通うほど、山口刃物製作所の歴史や伝統の技術、そして刃物について熱く語る五代目に心酔し、傾倒していったのです。
実はこのWEBサイトのアイコンのモデルは、山口刃物製作所の五代目なのです。
ー今世界が注目する日本の刃物ー
日本刀作りで育まれた伝統の技を生かした日本の包丁は、今世界に注目されています。
日本刀は、日本独自の技術によって作られる「玉鋼」を原料に、熱した刀身を槌で叩いて成形して作られ、これを「打刃物」製法といいます。
刀鍛冶の職人がこの製法で包丁を作ったり、その技術を農民に伝えることで日本刀のように鍛えられた優れた切れ味の包丁が作られるようになりました。
山口刃物製作所もその流れを汲み、五代目まで積み重ねてきたその技術は、日本有数の水準を保っていました。
その包丁は特有の職人気質と手仕事の精神が息づき、一本一本が職人のこだわりで作られている、まさに匠の作品ともいえる逸品です。
その伝統と技術に裏付けされた高品質が特長であり、単なる道具ではなく美しさと実用性を兼ね備え、使う者に感動を与える唯一無二の包丁と言えるでしょう。
ー山口刃物製作所 最後の魂ー
私は、山口刃物製作所の包丁に魅了され、弟子入りを志したのですが、五代目の体調不良によりその夢は叶いませんでした。
そして残念ながら、六代目を育て上げる前に五代目が急逝したことにより、その技術は途絶えてしまいました。
しかし、匠から託された包丁がわずかながら残っています。
元々手作りによる少量生産である事と、匠が他界してしまった今となっては、今後は一切手に入らない逸品です。 最後の職人の魂が込められている貴重な宝物であり、二度と手に入らないものなのです。
これらを手放したくないという思いもあったのですが、倉庫に埋もれさせておくのは、日本の「文化遺産」の損失であり、何より五代目の意に反すると思ったのです。
そこで、この価値を感じて頂ける皆様だけに、お譲りすることを決意しました。
より使い手に喜んでもらえる包丁を作りたいという匠の思いが、その切れ味、使用感などからも見られます。
見た目の美しさだけではなく、実用性と機能性を高度に兼ね備えた刃物は他に類を見ません。
もし、手に入れることができたなら、親から子へ、子から孫へと次の世代に伝承し、伝統とその価値を未来に繋げて欲しいと願っております。
ー職人の伝統技術が生み出す抜群の切れ味ー
山口刃物製作所の包丁は丈夫さと切れ味を両立するために、ハイス鋼(HSS)の材料を使っています。
特長は匠による優れた「鍛造(かじ)」と「研ぎ」の技術による研ぎすまされた刃先の「切れ味」です。
伝統技術により鍛えられた刃物は硬度が高く、抜群の切れ味が長く続きます。
現在は品薄になってしまいましたが、用途に応じたさまざまな形の刃物があるため、プロの料理人からも高い人気を博していました。
工芸品ともいえる包丁ですが、是非、思う存分に使ってください。
それが山口刃物製作所の先代たちの願いに違いないと信じております。